PAST EXHIBITIONS
Past Exhibition
2020. 2 / 9 sun.
Yusuke Yamatani
[ I CAME BACK HOME ]
山谷佑介 ヨーロッパツアー帰国報告展覧会andトーク 2020
「I came back home」
「Doors」とはパフォーマンスと写真撮影を融合させたセルフポートレート作品です。山谷は自身の意思を排したセルフポートレートを撮影するために、特殊な装置を考案し、2018年春より日本国内でパフォーマンスを行なってきました。
会場ではドラムセットの周囲に3台のカメラを設置し、ドラムを叩いた振動をセンサーが感知すると強烈なストロボ光を放って山谷自身や観客、会場の様子が撮影されます。撮影された写真はパソコンを経由して、複数台のプリンターから絶えずプリントアウトされます。不規則に切られるシャッターと暗闇に放たれるフラッシュは、山谷の姿を残像として観客の瞼に焼き付け、プリンターから大量に出力された写真はそれとは違うイメージを生み出すなど、パフォーマンスから写真の生産に至るまでの一連の流れは、人間の意識や物事をみる眼差しの歪みや複雑さを浮かび上がらせました。
2019年9月、山谷は必要な機材をバンに詰め込み、ヨーロッパ6カ国を巡るパフォーマンスツアーを敢行しました。 走行距離4,980km、全8回のパフォーマンスで撮影された写真は3,563枚にのぼりました。今回の帰国報告展覧会では、その全ての写真がプリンターから出力され、会場内に積み上げられています。また、山谷はパフォーマンスで出力されたプリントが、それを持ち帰った人々の家でどのように存在しているかという”その後”をリサーチするため、来場者たちに「#myyamatani」のハッシュタグをつけての写真の投稿を呼びかけました。そこで集まった写真には、山谷の依頼に応えようとする撮影者たちの配慮が見られ、”意識的に写真を撮る”という行為の本質を垣間見ることができます。
今回の旅を振り返り山谷は「俺はずっと剥ぎ取ろうとしてきた。でも、取ろうとしないで、こちら側を剥ぎ取った。 そしたらそこには優しい世界がありました。」と述べています。SNSなどを通して日々多くの写真や情報を目にし、常に何者かからの視線の中を生きる相互監視的な社会の中で、自らの身を持って、アナログな方法で写真という行為に飛び込んだ写真家の軌跡を、作家本人のトークと共にどうぞご高覧ください。
山谷佑介(Yusuke Yamatani) http://www.yusukeyamatani.com
1985年、新潟生まれ。写真スタジオに勤務した後、期せずして出会った東松照明や無名の写真家たちとの交流を通して写真を学び、作家としての活動を開始。ユースカルチャーの儚い姿をストレートなモノクロ写真で捉えた「Tsugi no yoru e」を2013年に発表し注目され、それ以降、ライブハウスやクラブの床、自身の新婚旅行、深夜の住宅街、セルフポートレートなどさまざまなテーマの作品を展開し、現代人をとりまく世界のあり方についてのユニークなヴィジョンを提示している。
主な写真集に『ground』(Gallery Yamatani)、『RAMA LAMA DING DONG』(Gallery Yamatani)、『Into the Light』(T&M Projects)がある。