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PAST EXHIBITIONS

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Past Exhibition

2019. 1 / 11  sat. ––– 2019. 2 / 24 fri

11:00 – 19:00  Close ( Tue )

松川 朋奈 | Tomona Matsukawa

[ Love Yourself ]

松川朋奈の絵画は、その謎めいたタイトルと相まって、独特なドラマを感じささせます。松川の制作は、複数の女性にインタビューをすることから始まります。偶然街で出会った人、あるいはインターネットなどを介して知り合った人とふたりで会い、彼女たちの生活について話を聞き、そしてそれらの取材から絵画を描き起こしていくのです。

本展では、「母親」に焦点を当てて制作した新シリーズ「Love Yourself」を発表します。

母親として生きていくことについて女性たちと対話を重ね、親としての葛藤や、日々に流されまいと必死に生きる彼女たちの疵(キズ)や孤独を松川は鋭く捉えます。

他者のストーリーを通して「他人事」ではない、社会に潜むリアリティーを松川の絵画は表出させるのです。

私は、シングルマザーとして7歳の子どもを育てている。

シングルマザーになってから、いまだ日本に根強く残るひとり親家庭への差別など、様々な問題に直面した。また子どもをひとりで守り育てていくことの重圧や、「良い母でなければならない」という脅迫めいたプレッシャーに、私は疲れ果てていた。このような思いを心に抱えたひとり親は、私だけではないはずだ。そんな考えから、私はひとり親たちへの取材にとりかかり、今回の展覧会の作品群を制作した。

展覧会タイトル「Love Yourself」は、カナダで起こったある事件に由来している。2018年3月12日、トロントの博物館に展示されていたオノ・ヨーコ氏の作品の一部が盗まれる事件が起こった。その作品は観客参加型で、観客は作品の一部である小石を自ら移動させることを許されていた。しかしとある年配の女性が、その石の一つを密かに持ち帰ってしまったのだ。

その石には、オノ・ヨーコ氏の直筆で「LOVE YOURSELF」と書かれていた。当然だが、作品を盗むという行為は許されるものではない。しかし私はその石に書かれていたメッセージが「LOVE YOURSELF」だと知った時、どこかこの事件にロマンのようなものを感じたのである。

彼女は数ある石の中から「LOVE YOURSELF」を選んだのだ。この言葉が彼女を突き動かしてしまったのであれば、この言葉にはなんと強い力があるのかと感じ、事件が強く印象に残った。「LOVE YOURSELF」という言葉に人を突き動かす言葉があるのならば、私は自分のようなひとり親たちにもこの言葉をかけたいと思ったのである。

私は、どんな環境にあっても、ひとり親が自分たちの行いを恥ずべきではない、自分の行動を強く信じるべきだと考えている。日本のすべてのひとり親が、子どもと自分自身を強く愛する気持ちを持つことを願って。

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